原題『Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb』
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』
名作中の名作ブラックコメディー。キューブリック監督作品 1964年公開
アメリカ国立フィルム登録簿が立ち上がった際、保存すべき映画として選ばれた最初の25本の作品のひとつになっています。
ピーター・セラーズの一人三役の怪演がとにかく見事です。シリアスだけど笑えます。
実は同時期に作られた元ネタが同じ映画の『Fail Safe(未知への飛行)』(リメイク作品もあり)もありますが、そちらは『博士の異常な愛情』からコメディー要素を一切省き、シリアスな観点からのみ描いた作品です。それゆえに緊迫感みなぎる内容にはなっているのですが、『博士の異常な愛情』のほうはシリアスにブラックなユーモアを掛け合わせたところが作品としてさらに高い次元に昇華させていると感じます。そして結果として『博士の異常な愛情』のほうがよりシリアスでリアルであるとも言えるのです
「よりシリアスでリアル」というのはまさにいまの戦渦の状況と重なります。
ロシアの行っている暴挙とその口実。核使用の恫喝、原発への攻撃、フェイク。誰もが眉を顰める狂犬プーチンの論理思考。
核をお互いに持っていることこそが「核を使わない核均衡」になるという最もらしい考えかたは、狂った人間一人の存在で簡単に歯車が狂ってしまうという、いま世界が目の当たりにしている現実世界ではないのかと。
かつて誰かがヒトラーを説得できたのでしょうか。
そんなことを考えながら観ると背筋が寒くなること請けあいです。